かもとかち

自分と対話します。

人生記録 その2

 最古の記憶は、まだ昼だというのに外がえらく薄暗くて、空から降る雪はあまりにも激しく風に乗り、横向きに叩きつけるように流れていた。

 それでも僕らがいる幼稚園の中は外界から遮断されていて、今では田舎でもなかなかお目にかかれないタイプのストーブが部屋の中を心地のよい空間に作り替えてくれている。この時間は外で各々が砂場で山を作ったり、鬼ごっこに興じたりして名一杯に子供のエネルギーを発散しなければならない園児タイムのはずなのだけれど、悪天候のおかげで部屋の中から外に出させてもらえなかった。
 ただ、むしろ普段では滅多に起こらないこのアクシデントに興奮していたのだと思う。だから今でも覚えてるんだ。窓の外は銀色の暗い世界に覆われているのに、僕らの教室は暖色に包まれていて、まるで僕の家庭環境を表しているようだった。

 興奮した園児たちを落ち着かせるために、先生は教室でも楽しめる遊びを提案した。みんなで折り紙をちぎって裏側に海苔をつける、それを大きな画用紙にみんなで貼り付け一枚の大きな絵を作るというお遊戯である。この幼稚園には園児が10人にも満たない。広さの割りに少ないのには理由があって、多分、ほんのちょっとだけ世間の一般とはズレていたんじゃないかな、ほとんど普通の場所と変わらないんだけど、やっぱり違うのは否定できない。
 その折り紙で出来た絵は、とある国の国旗だった。教室の黒板の中央にはその国の一番偉い人の肖像画が飾られていた。ここは日本だ。でも違う国旗だった。

 しばらくして親の都合により引っ越しをして別の幼稚園に入園することになった。そこは普通の、どこにでもあるありふれた幼稚園だった。
 ただ、生まれてそれまでズレた環境で育ってしまったので、ズレた環境が僕にとっては普通になっていて、世間の普通を普通だと感じられなくなってしまっていた。僕は生まれて間もないただの子供で、どこにでも適用できるほど、器用な人間じゃなかったんだ。
 成長するにはあまりにも慌ただしすぎた。